「介護施設を新設したいが、建築費が想定を超えてしまう」
介護報酬の改定、人件費や光熱費の上昇が続くなか、事業計画の中でもっとも大きな変動要素になっているのが建築費です。そして、ここ数年で明確に増えているのが、「鉄骨造で考えていたが、木造でも建てられないか」というご相談です。
結論からお伝えすると、介護施設・高齢者住宅は、木造ともっとも相性の良い建物用途のひとつです。
理由は3つあります。
- 法改正で、木造の介護施設が格段に建てやすくなった
- 個室が並ぶ間取りが、2×4工法の構造と噛み合っている
- 建築費・減価償却・光熱費の3方向でコストメリットが出る
この記事では、富山市・高岡市・射水市・砺波市など富山県内で介護施設の建築を検討されている事業者様に向けて、木造という選択肢が実際どこまで現実的なのかを、法規制・コスト・使い勝手の面から整理してお伝えします。
なぜ今、介護施設の木造化が進んでいるのか
かつて「介護施設=鉄骨造かRC造」というのが半ば常識でした。その前提を変えたのが建築基準法の改正です。
2019年6月に施行された改正建築基準法により、耐火構造としなくてもよい木造建築物の範囲が拡大されました。3階建ての老人ホームや学校などについて、一定の防火措置を講じることで、これまでより木造化しやすい制度に変わっています。あわせて防火地域・準防火地域における規制の合理化も行われました。
さらに国は、2050年カーボンニュートラルに向けて中大規模木造建築の普及そのものを政策として後押ししています。国土交通省・林野庁ともに補助制度を用意しており、「木造で建てる」ことが政策の追い風を受ける状況になっています。
※3階建て以上の計画や、防火地域・準防火地域内での計画は、用途・規模・地域指定によって個別に判断が必要です。計画地が決まった段階でのご相談をおすすめします。
理由①|個室が並ぶ間取りは、2×4工法と相性が抜群
ここが、介護施設と木造の相性を語るうえでもっとも本質的なポイントです。
私たちが採用している2×4工法(ツーバイフォー)は、壁・床・屋根を「面」で支える構造です。柱と梁の「線」で支える在来工法とは異なり、建物全体で地震や風の力を受け止めます。
この工法には、「壁が多い建物ほど強くなる」という特性があります。
そして介護施設は、居室・浴室・トイレ・スタッフルームと、小さな部屋が数多く並ぶ建物です。つまり、
- 構造上必要な壁が、間取り上もともと必要な壁と一致する
- 無理な補強や余計な柱を入れずに、必要な構造耐力を確保できる
- 結果として、設計の自由度を犠牲にせずコストを抑えられる
大空間が必要な倉庫や体育館では工夫が要りますが、介護施設のような小部屋主体の建物は、2×4工法がもっとも力を発揮する用途なのです。
遮音性というおまけ
面構造で壁の中に断熱材が充填される2×4工法は、居室間の遮音でも有利に働きます。
夜間のケアや、利用者様同士の生活音への配慮が求められる施設にとって、これは見過ごせない実利です。
理由②|コストは「建築費・税・光熱費」の3方向で効く
1. 建築費:鉄骨価格の高騰を回避できる
鉄骨は国際的な鋼材相場の影響を強く受け、ここ数年で大きく値上がりしました。2020年と比べて1.3〜1.5倍の見積もりになるケースも珍しくありません。
一方、2×4工法で使う木材は規格の決まった流通材です。特注の集成材を待つ必要がなく、価格の見通しが立てやすい。富山県は森林資源に恵まれた地域でもあり、県産材を活用すれば輸送コストも抑えられます。
2. 税:法定耐用年数の差が、そのまま節税額の差になる
介護施設は税務上「病院用」等の区分で扱われることが一般的です。
| 構造 | 法定耐用年数(病院用) |
|---|---|
| 木造 | 17年 |
| 鉄筋コンクリート造 | 39年 |
使用年数が短いほど、1年あたりに経費計上できる減価償却費が大きくなります。
同じ建築費でも、木造は年間の償却額を大きく取れるため、開設初期の税負担を抑えやすい構造です。
(※用途区分の判定と実際の税効果は個別事情によります。顧問税理士さんにご確認ください)
3. 光熱費:24時間稼働の施設ほど、断熱性能が効く
見落とされがちですが、介護施設は24時間365日、空調を止められない建物です。運営が続く限り、光熱費は永久にかかり続けます。
2025年4月から、原則すべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務化されました。これは裏を返せば、「断熱性能をどう確保するか」がすべての建物で問われる時代になったということです。
2×4工法は、壁の中に断熱材を隙間なく充填しやすい構造です。木材そのものにも断熱性があり、熱を伝えにくい。建てた瞬間だけでなく、20年30年と続く運営コストで差がつくという視点は、事業計画上きわめて重要です。
理由③|木の空間が、利用者様にも職員にも効く
コストの話に偏りましたが、介護施設だからこそ意味を持つのが「空間の質」です。
- 木の視覚的な温かみが、施設特有の無機質さをやわらげる
- 木材の調湿作用により、室内の湿度変動がゆるやかになる
- 結露しにくい——富山県は冬の湿度が高く、結露に悩まされる施設も少なくありません
そして、これは採用面にも効いてきます。
介護人材の確保が事業の生命線となっている今、「働く環境として気持ちのいい建物かどうか」は、想像以上に大きな要素です。見学に来た求職者が受ける第一印象は、待遇と同じくらい効いてきます。
富山県で建てるなら、押さえておきたい制度
富山県には、県産材を使った施設の木造化・内装木質化を助成する「木の香るとやまの街づくり事業」があります。
- 令和4年度から、不特定多数の方が利用する民間施設も補助対象に
- 内装木質化の補助上限は200万円
- 申請窓口:富山県農林水産部 森林政策課 木材利用推進係(TEL:076-444-3388)
加えて、国土交通省の優良木造建築物等整備推進事業では、病院・診療所・児童福祉施設などの用途も対象に含まれています。市町村独自の助成が使えるケースもあります。
いずれも「着工前」の申請が原則です。詳しくは「富山県で大規模木造建築に使える補助金・助成金・税制優遇まとめ」の記事で整理しています。
よくあるご質問
Q. 3階建ての介護施設も木造で建てられますか?
A. 法改正により、以前より現実的な選択肢になっています。
2019年6月施行の改正建築基準法で、3階建ての老人ホーム等について、一定の防火措置を講じれば耐火構造としなくてもよい範囲が広がりました。
ただし、規模・立地(防火地域か否か)・避難計画によって要件は変わります。計画地と規模が固まった段階で、具体的にご相談ください。
Q. 火事が心配です。木造は不利ではありませんか?
A. 太い木材は、意外なほど火に強いという性質があります。表面が炭化しても内部まで燃え進みにくく、鉄骨のように熱で急激に強度を失うことがありません。
2×4工法では、壁の中に炎が広がらないよう仕切る部材(ファイヤーストップ材)が組み込まれており、石膏ボードとの組み合わせで法令の防火基準をクリアできます。
消防設備(スプリンクラー等)の要件は、構造よりも用途と規模で決まる部分が大きく、木造だから追加負担が発生するというものではありません。
Q. 地震に弱くありませんか?
A. 2×4工法は、地震に強い建て方として知られています。
壁・床・屋根が一体の箱として力を分散させるため、過去の大地震の被害調査でも倒壊率が非常に低いことが報告されています。
立山連峰のふもとで、地震にも豪雪にも備えたい富山県の施設にとって、安心して採用できる構造です。
Q. メンテナンスの負担は大きくなりませんか?
A. 屋根・外壁の防水を適切に行えば、2×4工法の木造は数十年単位で使えます。
規格化された工法なので、改修や部分的な補修の際も部材を調達しやすいというメリットがあります。
Q. 将来の増築や用途変更に対応できますか?
A. 木造はむしろ有利です。
鉄骨造・RC造に比べて改修時の解体・加工が容易で、利用者数の変化に合わせた増築や、居室構成の見直しに対応しやすい構造です。介護保険制度の改定に合わせてサービス形態を変える可能性がある事業者様にとって、この柔軟性は無視できません。
Q. 木造だと金融機関の評価が下がりませんか?
A. 融資審査で重視されるのは、建物構造そのものよりも事業計画の妥当性です。
むしろ木造は建築費を抑えられるため、総投資額が小さくなり、返済計画に余裕が生まれるという見方もできます。事業計画書の作成段階からご相談いただければ、構造選定の根拠も含めてご説明できます。
富山県内での実績
大規模木造Eight Labo(石坂建設) は、富山県内で介護・福祉施設の木造建築を手がけてきました。
- ナーシングホーム悠ライフ富山奥田(富山県内 木造事例集にも掲載)
- 富山市奥井町 介護施設新築工事
- 射水市 複合施設新築工事
地鎮祭から建方、仕上げ、引き渡しまでの全工程を建築レポートとして公開しています。「木造の介護施設が実際どう建っていくのか」を写真でご確認いただけますので、あわせてご覧ください。
まとめ:介護施設は、木造がもっとも噛み合う用途
- 法改正により、3階建てを含めて木造の選択肢が広がった
- 個室が並ぶ間取りは、面で支える2×4工法と構造的に相性が良い
- 鉄骨価格の高騰を回避でき、建築費の見通しが立てやすい
- 法定耐用年数17年(病院用)による減価償却メリット
- 断熱性能が、24時間稼働する施設の運営コストを長期にわたって左右する
- 木の空間が、利用者様の居心地と、職員の採用にも効く
- 富山県・国の補助制度が使える可能性がある
大規模木造Eight Labo(石坂建設) では、富山市・高岡市・射水市・砺波市・小矢部市・南砺市・黒部市・魚津市など富山県全域で、介護施設・高齢者住宅の設計から施工までワンストップでサポートしています。
土地探し、事業計画、融資相談、補助金申請までまとめてご相談いただけます。
「この規模・この立地で、木造は成立するのか?」——まずはその確認からで構いません。お気軽にお問い合わせください。

